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■ 三重発動機 お客様に聞く - 文化学園  (東京、非常用自家発電エンジンの修理)


東京都渋谷区の学園敷地に10棟の学舎を有する文化学園は、非常用発電エンジンの修理を三重発動機に依頼した。なぜ東京の学校である文化学園が、三重県の業者である三重発動機を起用したのか、施設部技術課 佐々木剛氏に詳しくきいた。

もくじ 
  1. 文化学園 施設部について
  2. 三重県から、三重発動機を呼び寄せた理由
  3. 最初の業者は、見積が不可解だった。
  4. 三重発動機への第一印象
  5. 下見の結果、見積金額は三分の一に
  6. 実際にどんな修理を行ったのか
  7. 電気系統のトラブルへの対処
  8. 機械系統と電気系統の両方の知識・技術を持つ点を評価
  9. 業者の見分け方
  10. 今後の期待


■ 文化学園 施設部について

― 文化学園 施設部について教えてください。

文化学園は1919年(大正8年)の設立以来、日本のファッション教育の中心的な存在として指導的な役割を果たしてきました。現在、新宿駅前の学園敷地には、文化服装学院や文化女子大学など10棟の建物があります。私が所属する施設部は、学園内の施設、設備の保守、管理、省エネなどを担当する部門です。

文化学園 施設外観

これをお読みの皆様には周知のことと思いますが、ある程度、大きなビルには、非常用自家発電装置の設置が義務づけられています。文化学園にも、複数台の非常用自家発電装置があります。

文化学園の非常用自家発電装置エンジン

平成21年4月に、三重発動機に、非常用自家発電装置エンジン(以下、自家発エンジン)1基の修理、整備を依頼しました。


三重発動機が提出した工事完了報告書

 

■ 最初の業者は、見積が不可解だった。

― 文化学園の敷地は東京にあるのに、なぜ今回、三重県から三重発動機を呼びよせたのかを教えてください。

話を分かり良くするために、最初から説明いたします。

平成20年9月に自家発エンジンの定期点検を行った際、うち一基に動作不具合の兆しがあることが分かりました。さっそく、契約しているビルメンテナンス会社に修理を依頼したところ、あるエンジン修理会社が紹介され、見積が来ました。しかし、この見積の内容がいただけませんでした。

― 見積の内容は、何が「いただけなかった」のですか。

まず単純に、値段が法外でした。高かった。
その一方で、「修理が成功するかどうかは確約できない」と書いてある。つまり、「高い料金を支払っても、治らないかもしれない」ということです。

その業者によれば、値段が高い理由は、「修理には、オーバーホール(分解整備)が必要だから」とのことでした。しかし本当にオーバーホールが必要なのかの根拠が薄弱。見積費目も、「人件費」、「修理費」、「管理費」など、大ざっぱでした。

直感的に、これは「捨て見積(すてみつ)」だと感じました。「本当は修理する自信はないけれど、『できない』とはさすがに言えない、では法外な値段の見積を出そう。そうすれば断ってくれるだろう。まかり間違えて、見積が通って仕事になってしまった時は、オーバーホールすれば何とかなるだろう。念のため「修理できるかどうかの確約はない」と一言入れておけば、保険も打てる」。見積からは、そんな逃げ腰の考えが見えました。

この業者には任せられない。他を探そうと決めました。

■ 三重発動機への第一印象

― かわりの業者は、どうやって探しましたか。

インターネットの検索で探しました。そして見つけたのが三重発動機です。所在地が三重県であることは気になりましたが、きちんと修理してくれるのなら遠い場所の会社でもかまいません。まずは電話してみることにしました。

不具合の原因と予測された、
燃料噴射ポンプ(交換後の写真)
― ここで三重発動機 北川さんに質問します。文化学園から「(非常用発電エンジンの)修理はできないか」と電話で打診され、どのように回答しましたか。

「たぶん修理できます」と回答しました。お聞きした情報を総合すると、文化学園様の発電エンジンの不具合の原因は、燃料噴射ポンプだと予測できました。つまり、燃料噴射ポンプを整備すれば、高い確率でエンジンが始動できない症状は治る、そう考えて「たぶん修理できる」という中間結論に達しました。

ただ、東京の業者さんは、オーバーホールが必要だと言っているとのこと。軽々に断定してはいけないので、佐々木様に「その業者からもらった見積書を社名と金額を消してFAXしてください」と依頼しました。

― 届いた見積書を見て、どう思いましたか。

率直なところ、佐々木様がおっしゃるとおりの「捨て見積」だと思いました。名目はオーバーホールの見積となっていましたが、部品点数が少なすぎる。もし本当にオーバーホールをするつもりであれば、部品点数が100以上は出てこなければいけない。しかし、その見積では、部品がわずか数点しか計上されていなかった。本気でオーバーホールをやろうとしているのだろうか?と感じました。

この見積と同じ項目で積算することは無意味だと感じました。その考えを佐々木様に告げて、まず一度、白紙の状態にして、エンジン実機の調査に伺いました。

三重発動機の一連の対応は、まじめで、これはいいなと思いました。冷静に情報収集し、正確に回答してくる。専門家としての静かな自信を感じました。

■ 下見の結果、見積金額は三分の一に

― ふたたび北川さんに質問です。下見の結果は、いかがでしたか。

エンジン実機を調べた結果、やはり燃料噴射ポンプに不具合がありました。何らかの理由で噴射ポンプ内部に水が入り、錆が発生したため、プランジャと呼ばれる部品が固着したことが動作不良につながったようでした。

原因がほぼ確定したので、あらためて修理計画と見積金額とを佐々木様に提示しました。

― どんな修理計画を提示しましたか。

文化学園様のニーズは、「エンジンのフルオーバーホール(総分解整備)」ではなく、「とりあえず動作不良がなくなり、エンジンが始動できること」でした。
そのため、消去法にて故障部位を特定するのが最適だと考え、ニーズを満たすために次のような提案をしました。

  1. 燃料噴射ポンプの不具合が始動不良の主たる原因であることはほぼ間違いない。

    → 燃料噴射ポンプを整備すれば、70%の確率で、エンジンの始動不良は治るはず。
  2. ただし、本来、噴射ポンプ内部に水が混入する事はありえない。
    水が入り込んでいるという事は、エンジン内部で燃料系統、潤滑油系統、冷却水系統が
    混触している可能性も充分想定できる。

    →冷却水系統のチェックと配管一部を交換したい。
    潤滑油系統については、オイルパン内のエンジンオイルに水が混入していない事から
    オイル交換をかねたフラッシングにて対応できる。
    燃料系統についてもダイリューションが発生していないため、燃料噴射ノズルをチェック
    すれば、ある程度の漏れ箇所が絞り込めるはず。
  3. これらの整備を行っても始動できない場合は、改めて、残り30%の要素をつぶしていく。
  4. このダンドリで進めれば、修理の手間や交換部品も最小限にできるので、見積金額も最小に抑えられる。

    → 結果的には「フルオーバーホールの見積」よりは安くなるはず。


「三重発動機には、逃げ腰の
ところがありません」
― 佐々木様は、この提案を聞いて、どう思いましたか。

逃げ腰のところがない。「この業者は良い」と確信できました。

念のため、突拍子もない質問もしてみました。それに、どう反応するのか、表情を見ているのです。北川さんは、予期せぬ質問に対しては、一瞬は「そこを聞いてくるか…」という表情はするものの、少し考えた後、必ず理に適った説明を返してきました。

見積金額も妥当でした。三重発動機の見積金額は、最初の業者の金額の三分の一でした。

これなら任せられると確信し、三重発動機に修理を依頼することを決めました。

(三重発動機 北川):ご評価ありがとうございます。見積金額について補足いたします。先にも述べたとおり、東京の業者さんの見積金額は知らされておりません。ですから、これは「合見積の下をくぐった」とか「仕事を取るために無理して安くした」という話ではありません。三重発動機として、不具合原因を調査し、それに基づいて積算し、ご提示申し上げた「ふつうの見積」です。

■ 実際にどんな修理を行ったのか

― 北川さんに質問です。実際に行った修理の内容を教えてください。

まず、燃料噴射ポンプのオーバーホールを行いました。これでエンジンの始動不良は治りました。
予想通りでした。


三重発動機での燃料噴射ポンプのオーバーホールの様子


その他、調査の際に気になっていた箇所も、佐々木様と相談の上、修理・整備することにしました。
具体的には次の通りです。
  • 冷却水配管の劣化(発錆)、減圧弁、ソレノイドバルブの損傷
    → 部品交換
  • 制御用蓄電池(バッテリ)切れ
    → バッテリ交換
  • オイルフィルタ、燃料フィルタ、エアフィルタの経年劣化
    → フィルタ交換
  • 燃料噴射ノズルのチェック
    →燃料噴射開始圧力値と噴霧状態の確認
  • エンジン内部の汚れ
    → オイル交換を兼ねたエンジン内部の簡易フラッシング(※)
※ 簡易フラッシングの具体的な手順は次のとおりです。
  1. オイル交換を行う。
  2. オイルをエンジン内部で循環させ、内部の汚れを洗いとる。
  3. 汚れたオイルをすべて排出する。
  4. 再び新しいオイルを入れる(これでエンジン内部はスッキリする)。


(佐々木氏):三重発動機さんの処置は万事、的確でした。ただし、最後の最後になって、ドキッとすることがありましたが。

■ 電気系統のトラブルへの対処

 最後の最後に不具合が見つかった
電気系統部分
― 何があったのですか。

(佐々木氏):すべての修理作業が終わった後、三重発動機から「不具合箇所の修理は終わりましたが、確認試運転のため、電気系統も含めシステム全体の点検をしておきます」と提案があったので、お願いしました。
すると、あるシステム上の動作に不具合があることがわかりました。発電装置に異常が発生した際の警報システムでした。エンジン室の空気が重くなりました。

― 北川さんに質問です。その後、どう対処しましたか。

(北川):ただちに、制御系統を調べて原因を追及しました。調査の結果、不具合の原因は制御パネル内の基板パターンが剥離していたせいだと分かりました。経年劣化で剥がれ落ちたのだろうと思います。現場で応急処置をして、システムの正常動作を確認しました。

こうして、文化学園様の非常用発電エンジンの修理作業は、すべて終了しました。

■ 機械系統と電気系統の両方の知識・技術を持つ点を評価

― 今回の修理を通じての三重発動機への評価をお聞かせください。

(佐々木氏): 最後に起きた電気系統へのトラブルへの対処を見て、この会社は「意地になる会社」なんだなと思いました。あれは機械まわりではなく、電気系統のトラブルだったので、三重発動機の担当の範囲外、見積の範囲外と解釈できないこともない。最終点検などせずに、見て見ぬふりをして、帰ってしまうことも不可能ではありませんでした。

しかし、三重発動機は、変な言い方ですが、こちらが頼みもしないのに点検を申し出て、不具合を見つけると、こちらが何も言わないうちから、すぐに図面をひろげて原因を探し始めました。そして意地になって原因を突き止め、最後は修理してしまいました。この「意地の張り方」は職人です。

そもそも、エンジン屋の北川さんが、電気系、制御システムの知識と技術を持っていたことに驚きました。通常は、エンジン屋はエンジンだけ、電気屋は電気だけを担当し、自分の担当外には手を出さないものなのですが。

(北川):私は、大学は、工学部電気科の出身です。前職も、ある重工会社で発電プラント(分散型電源)の電気システムの設計部門でしたので、システムとして把握できるのが、私のセールスポイントだと思っています。

■ 業者の見分け方

― 経験者だから分かる、良いエンジン修理会社を見分けるためのコツ、ツボなどあればお知らせください。

(佐々木氏): どんな仕事でも同じだと思いますが、「人をよく見ること」がだいじです。人を見るには質問をするのがよいと思います。いい加減な会社は煙に巻いてごまかそうとします。しかし、まともな会社は、意地になって答えようとします。

■ 今後の期待

― 三重発動機への今後の期待についてお聞かせください。

(佐々木氏): 今回、良い仕事をしていただきました。ありがとうございます。文化学園には、非常用発電エンジンが他にもありますが、こちらの保守管理についても今後、相談に乗っていただきたいと考えています。これからも、よろしくお願いいたします。

文化学園 佐々木様、本日はお忙しい中、
貴重なお話をありがとうございました。

※ 文化学園のWebサイト
※ 取材日時 2009年6月
※ 取材制作:カスタマワイズ