― ふたたび北川さんに質問です。下見の結果は、いかがでしたか。
エンジン実機を調べた結果、やはり燃料噴射ポンプに不具合がありました。何らかの理由で噴射ポンプ内部に水が入り、錆が発生したため、プランジャと呼ばれる部品が固着したことが動作不良につながったようでした。
原因がほぼ確定したので、あらためて修理計画と見積金額とを佐々木様に提示しました。
― どんな修理計画を提示しましたか。
文化学園様のニーズは、「エンジンのフルオーバーホール(総分解整備)」ではなく、「とりあえず動作不良がなくなり、エンジンが始動できること」でした。
そのため、消去法にて故障部位を特定するのが最適だと考え、ニーズを満たすために次のような提案をしました。
- 燃料噴射ポンプの不具合が始動不良の主たる原因であることはほぼ間違いない。
→ 燃料噴射ポンプを整備すれば、70%の確率で、エンジンの始動不良は治るはず。
- ただし、本来、噴射ポンプ内部に水が混入する事はありえない。
水が入り込んでいるという事は、エンジン内部で燃料系統、潤滑油系統、冷却水系統が
混触している可能性も充分想定できる。
→冷却水系統のチェックと配管一部を交換したい。
潤滑油系統については、オイルパン内のエンジンオイルに水が混入していない事から
オイル交換をかねたフラッシングにて対応できる。
燃料系統についてもダイリューションが発生していないため、燃料噴射ノズルをチェック
すれば、ある程度の漏れ箇所が絞り込めるはず。
- これらの整備を行っても始動できない場合は、改めて、残り30%の要素をつぶしていく。
- このダンドリで進めれば、修理の手間や交換部品も最小限にできるので、見積金額も最小に抑えられる。
→ 結果的には「フルオーバーホールの見積」よりは安くなるはず。
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